「鈍牛」もその一つ。
政治家で、首相を務めたこともある大平正芳さん、小渕恵三さんが「鈍牛」と呼ばれていました。
(いずれも在職中に病魔に倒れたという共通点もあります)
貶す言葉として使う場合、こんな意味になります。
動きが鈍い。慎重すぎて決断力に欠ける。即断即決ができない。
反応が鈍い。曖昧な答えではぐらかす。
歩みを止めない。頑固。
洗練されていない。野暮ったい。
先頭でリードする役割には不向き。リーダーシップに欠ける。
褒め言葉として使う場合、こんな意味になります。
着実に歩を進める。粘りがある。ぶれない。確実にやり遂げる。
人柄が穏やか。
先走らない。冗句がない。発言が慎重で信頼できる。
落ち着きがある。うろたえない。慌てない。
角がある。一見穏やかだが本気になると非常に強い力を発揮する。
とりあえず思いつくのはこれくらい。
政治家という立場で考えた場合、リーダーシップに欠け、リップサービスをしないことからあまり国民的人気は得られないイメージがあります。
ただ、小渕さんの場合は首相就任後には「ブッチホン」と呼ばれた直電話をするなどして、人当たりの良さをアピールしていました。これはおそらく誰かの入れ知恵なのでしょう。
そのため、親しみやすいイメージを国民に与え、在任中は比較的高い支持率を維持することに成功しました。
一方、大平さんの場合、答弁や記者会見の場で話す時に「アー、ウー」と口ごもる癖が有名で、「はっきりものを言わない」というイメージを持たれていました。
但し、大平さんの話し言葉は「文字起こしした時にほとんど手を入れなくていい」と言われていました。
普通の人の場合、話し言葉は文法が崩れていることが多いのですが、かしこまった場における大平さんの言葉は常に正しい文法が用いられていたというわけです。
英語にも "Holy sit!" という言葉があります。
アメリカンプロレスを見ているとよく出てくるので、知っている人もけっこういると思われます。
これは直訳すると非常に汚い意味なのですが、肯定的に用いられると「超すげえ」という意味になります。
オーウェルの小説『1984年』に「ダックスピーク」という言葉が出てきます。
「ダック」は「アヒル」、「スピーク」は「話」です。
これは、敵に用いられるときは「騒がしい、がなり立てる」という否定的な意味で、党の指導者に用いられるときは「雄弁」という肯定的な意味になります。
言葉は解釈によって良くも悪くもなる。
「ありがとう」は常に良い言葉であり、「ばかやろう」は常に悪い言葉であるとは限らないのです。
言葉をどう理解するかは、話す者、書く者、そして読む者、聞く者の心掛け次第。
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